「ちょっとはんこ貸して」も懲役に?!
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最近では何でも気軽にレンタルができるようになりました。カメラ、着物、ドレス、礼服…と、え?そんなのも貸してくれるの?と思えるものまで多種多様です。
もちろん、高額なものやよく知らない人からの貸し借りはトラブルの元になる可能性大。どんなに「冷たい人」と言われようが、聞かないフリをして丁寧にお断りすれば済むことです。
友人や知人とものの貸し借りはつきもので、「ちょっとこれ貸して…」ということってけっこうありますよね?
それは会社の同僚や先輩、後輩であっても同じことが起こります。
ティッシュやボールペンなどなら特に問題はないでしょう。
しかし、どうしても会社の書類にはんこを捺さなくちゃいけないのに、すっかりと抜け落ちてしまい忘れた…というボケボケの日もあるでしょう。特に休んだ次の日や、めちゃ忙しい日などは心ここにあらずでもの忘れがあるものです。
たとえば、佐藤、鈴木、田中、伊藤といったポピュラーな苗字だった場合、はんこを忘れてしまったので隣の田中さんに「ちょっと貸してもらえる?」と頼んだことがあるかもしれません
実はこのはんこの貸し借りが罪になるのをご存じでしょうか。
刑法第167条「私印偽造及び不正使用等罪」にあたるため、3年以下の懲役になってしまうのです。
はんこに関する刑法
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「刑法第19章」は、はんこについての罰則になっています。
刑法第164条は「御璽偽造及び不正使用等」です。
御璽は天皇がお使いになるはんこですから、これはさすがに使ったら誰でも罪になるのは当たり前でしょ!とわかるはずです。
刑法第165条は「公印偽造及び不正使用等」で、公務員のはんこや署名を偽造すると「三月以上五年以下の懲役に処する」となっています。「不正に使用し、又は偽造」すると罪に問われます。
これも「それはそうだろうな」とわかる刑法となっています。
ところが、刑法第167条の「私印偽造及び不正使用等」には注意が必要です。
「第1項.行使の目的で、他人の印章又は署名を偽造した者は、三年以下の懲役に処する。」
「第2項.他人の印章若しくは署名を不正に使用し、又は偽造した印章若しくは署名を使用した者も、前項と同様とする。」となっています。
要するに
・他人の印鑑を自分が使う目的で偽造した者
・他人の印鑑を不正に使った者
・偽造された他人の印鑑を使った者
が罪を受けるということです。
ということは、断って借りても罪になるということなのです。もちろん、勝手に借りたとしても同様に3年以下の懲役に処せられるということ。
日本ははんこ文化ですから、直筆サインよりもはんこの方が信用度が高い社会です。
ですから、種類に捺したはんこが違っているといくら本人が目の前にいたとしても、「このはんこは違います」と突き返されてしまうのです。
また、はんこは高価な実印であってもどんな三文判であったとしても、それはその人の分身と見なされてしまいます。
ですから、自分で捺した記憶がなくてもはんこが捺してあれば、その人が責任を負うということ。
本当は別の田中さんが捺したはんこだったとしても、はんこの持ち主の田中さんの責任となります。つい、うっかり…では済まされません。
また、はんこを捺した書類が重要書類だった場合、別の田中さんのはんこを捺したということがわかってしまうとその田中さんは刑法違反に問われことになります。
ですから、はんこを忘れたとしても、一度捺してしまうと責任が問われることになるので、必ず自分のはんこを捺すようにすることが重要です。
はんこは自分の分身
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認印を持っていると思ったのに忘れた、
バッグに入っていなかった
と、忘れ物は誰にでもあるものです。
実印や銀行印は問題だけれど、認印くらいならいいかな、
三文判というくらいだし、引き出しに入れっぱなしだから構わないでしょ、
と、自分と同じ苗字の人から何気なく借りてしまうと罪に問われることになります。
ものを借りるときは軽い気持ちで借りたり、貸したりするものです。
刑法第168条では「未遂は、罰する」とあるので、厳密に言えば借りようと思っても罰せられるということです。
誰にも言わなければバレはしないでしょうが…。
はんこは小さな頃からあるものですし、身近な存在です。だから、実印以外は軽く見てしまいがちですが、はんこを捺すということは「自分が責任を持つ」という意味です。
自分の分身ですから、気軽に貸し借りをしてしまう行為は止めること。
軽い気持ちで貸し借りすると、どこでどんなトラブルが待ち受けているかはわかりません。
1本は作っておきたい「認印」
ご紹介するのは、認印です。
100円ショップなどで売っているはんこを使っているようなら、きちんとした認印をこの機会に作るのも手です。
社会人なら書類に捺すはんこもきちんとしたものをそろえるようにしたいものです。
そして貸し借りなしにはんこをもっと大切に扱うように気をつけましょう。
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