日本では、役所に書類を出す時、家や車を買う時、遺産相続など、重要な手続き全般には必ずはんこが必要になります。
電子取引・電子申請が普及している今でもその文化はなくなりません。
特に若い方は、はんこの必要性を感じられない人も多いのではないでしょうか。
事実はんこを日常的に持ち歩いている人はあまりいません。
急に必要になったり、はんこを忘れたりすると、
「どうして日本は、何をするのにもはんこがいるのだろう!」と思いますよね。
そして、10年ほど前は韓国や台湾にも印鑑登録制度がありましたが、今では日本にしかありません。
今回は日本のはんこ文化がなぜなくならないのかをまとめてみました。
はんこ文化の始まり
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日本には、印鑑登録制度があります。
これは1873年(明治6年)に制定されたもので、重要な契約時には必ず署名と合わせて、捺印するというもの。
当時欧米のサイン文化も支持されていましたが、中国の官印制度を見習うことになりました。
この日まで庶民には印鑑を持つ権利がありませんでした。
これまでは天皇や武士が、その権力を表すためのものとして持てるものでした。
印鑑には長い歴史がありますが、一般人が使えるようになったのは最近のことです。
この制定された日、10月1日は「印章の日」とされ、全国で使わなくなった印鑑の供養が行われています。
はんこにはさまざまな種類があります。
土地購入、車購入、ローン契約などに必要なのが、実印。
銀行口座の開設、お金の引き出しに必要なのが、銀行印。
履歴書、婚姻届、免許の更新のときに必要なのが、認印。
その他にも、郵便物の受け取り、会社の業務担当をあらわすときにも使われます。
必要頻度が高いときには、朱肉いらずのシャチハタが使われます。
はんこ文化がなくならない理由
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はんこ文化がなくならない理由には、大きくわけて2つあります。
民法や法律で定められている
民法や法律で「捺印の必要性」を規定している箇所はたくさんあります。
例えば遺言状は自筆の署名と捺印が必要であることを民法968条で規定しています。
また刑事訴訟では、裁判官の「記名押印」を規定しています。
押印がないと、法的な文書として効力を持たないのです。
他にも「記名押印」することを規定している法的文書はたくさんあります。
こういったことから、はんこを安易に廃止できないというわけです。
ビジネスの場においてもはんこは必須
社会人になって、ハンコを使う機会の多さに驚いた経験はありませんか?
領収書、受領書などに捺す会社のはんこ。
またその隣には誰が書類を作ったのか確認するために個人の認印を捺します。
はんこ文化がなくならない背景には、紙文化の問題もあるのです。
日本は先進国の中でも、ビジネスにおいて紙資源を多く使います。
書類をつくると、誰が作ったのか誰が見たのかなどを一目見てわかるようにしなければいけません。
そうなったときに、サインよりも早い認印を使う必要があるのです。
はんこ文化にもメリットはある!?
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「はんこをわざわざ押すなんてめんどくさい」「はんこ文化は時代遅れだ」と思う方もいることでしょう。
しかし、実ははんこ文化にもメリットがあります。
それは、ビジネスでの契約です。
はんこ文化のないアメリカでは、契約の時に必ず第三者に立ち会ってもらう必要があります。
それが、ノータリー・リパブリックと呼ばれる、重要な契約の際に付きそう第三者の立場の公証人です。
その公証人が、まず本人であることを認めるスタンプを押してくれます。
公証人は、会社の法務部、郵便局や銀行などにいるので、こちらから出向いて立ち会ってもらう必要があります。
それに比べ日本では、役所で登録してある実印と印鑑証明証があれば第三者の立ち会いは必要ありません。
第三者を呼ぶ必要がないので、契約はどこの場所でもできます。
また、アメリカでは契約は必ず本人が行わなければいけません。
ですので、会社の契約には必ず社長自ら行います。
一方日本では実印と印鑑証明証があれば、代理人による契約も可能です。
はんこ文化はこれからも続いていく
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今回は、はんこ文化がなくならない理由について紹介しました。
はんこがなくならない主な原因は
・民法や法律で「捺印の必要性」を規定している箇所が多いから
・ビジネス場での紙文化との関わり
であるということがわかりました。
はんこは意外と生活に密接に関わっていて、切り離せないのが現状です。
面倒だと感じるはんこ文化ですが、便利な点もあります。
それは、はんこがあると代理人による申請や契約が可能であるということ。
夫の届け出を妻が代わりに提出したり、銀行で現金を引き出すこともできます。
便利なはんこ文化、まだまだ日本からなくなることはないでしょう。
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