「はんこ」はどうやって生まれた言葉?

「はんこ」はどうやって生まれた言葉?

どうして「印鑑」と「はんこ」のふたつの名前があるの?それぞれの言葉の意味を語源から説明。さらに、はんこ社会のながい歴史までを解説します。 2018年04月19日作成

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どうして「印鑑」と「はんこ」のふたつの名前があるの?それぞれの言葉の意味を語源から説明。さらに、はんこ社会のながい歴史までを解説します。 2018年04月19日作成

「印鑑」はかしこまったイメージがあるのに対して「はんこ」はマイルドな言葉。
それもそのはず、そもそも昔は「印鑑」と「はんこ」は全く別ものだったのです。

言葉は時代によって使われ方が変化するものですよね。

今回は、「印鑑」と「はんこ」の違い、それぞれのはじまりから現在に至るまでの歴史をご紹介します。

文末には知って得するはんこの知識もお伝えします。

「印鑑」と「はんこ」は違う?

出典元:https://www.shutterstock.com/

今でこそ「印鑑=はんこ」として広く使われていますが、本来は言葉の意味が異なります。
はんこは「個人や組織が本人であることをあらわすための道具」 
そして印鑑は「押した時に紙にのこる文字や絵のこと」です。

印鑑の「印」は「しるし」とも読みます。「鑑」はものをうつす「鏡」と同義語です。
つまり「印(しるし)をうつしたもの=印鑑」ということになります。
印鑑の本来の意味は印影と同じなのですね。

今でも、印影は印形(いんぎょう)とも呼ばれたり、印鑑は印章(いんしょう)と呼ばれたりします。ほとんどがお寺や印鑑業界のみで使われている言葉で、一般的にはあまり知られていません。

では、どうして「はんこ」と「印」というふたつの言葉が生まれたのでしょうか。そして実際どんな使われ方をしていたのでしょう。

印鑑の歴史

出典元:https://www.shutterstock.com/

印鑑の起源は今から5000年以上前の、古代メソポタミアまでさかのぼります。
当時の材質は石や宝石で、有力者が持っていました。メソポタミアの印章文化はやがて世界に広まります。

日本は、中国から印章が伝わりました。
その最古が「漢倭奴国王印(かんのわのなのこくおういん)」と言われています。まだ日本が「倭(わ)」という名前だった頃です。

そして奈良時代に中国の官印制度が日本に伝わり、印章が正式に使われるようになりました。当時は個人が印章を持つことは禁じられており、最初に作られたのは公印と呼ばれる天王、役所、国の印章でした。

奈良時代後期にはお寺や軍団も印章を持つようになりました。
平安時代に入ると、公家や領主といった権力者が「花押(かおう)」とよばれる形の凝った印鑑をもちはじめます。

庶民は拇印(ぼいん)や爪印(つめいん)という、指先に墨を付ける捺印をしていました。使う機会は少ないですが、拇印は今でも耳にする言葉ですよね。

そして戦国時代に入ると武士が権力をもち、名前の代わりに使う私印が広まります。
私印は本人と他者を区別するために使われていました。

その後も印鑑文化は続くのですが、ここでやっと「はんこ」の登場です。

はんこの語源

判子(はんこ)は江戸時代に流行った版行(はんこう)が転じた言葉だと言われています。
木版画(もくはんが)を知っていますか?
彫刻刀で木を彫ったものにインクをつけて、紙にうつす絵のことです。当時はこれが江戸時代で大流行していました。葛飾北斎などで有名な「浮世絵」です。

浮世絵はたいへん時間が掛かるので分業して作っていました。
下絵を描く「絵師」版木を彫る「彫師」色をのせて刷る「摺師(すりし)」
分業して絵を作成することを「版行」と呼ばれていました。

やがて絵自体を「版行」と呼ぶようになり、「版行」が文字や絵を掘った版木そのものの意味になります。次第に「判子(はんこ)」という呼び名になりました。

考えてみれば、木版画も印鑑も同じつくりかたですよね。

印鑑社会のはじまり

それまでは印鑑は国や有力者のみが持てるものでした。
しかし1873年(明治6年)に公式の書類には、署名だけではなく印を押すように定められたのです。

官印制度と欧米のサイン文化が対立した結果、署名よりも印鑑を重んじる結果となったのです。そのことから、印鑑制度が定められた10月1日は「印章の日」とされています。

不要になったはんこについて

「印章の日」である10月1日は、全国各地のお寺や神社で印章供養が行なわれています。

不要になったはんこ、処分に困ったものなど。それらは「印章供養祭」にもっていくのがいいでしょう。

はんこは本殿で神事をすませたあと印納社に納められ、埋納供養されます。
印章の日が近づくと印章組合が広告などで宣伝を行なっています。

興味がある方は是非一度足を運んでみてはいかがですか?

はんこの歴史を振り返って

はんこを押す時、背筋を正すようなシャキッとした気持ちになりませんか?
はんこの歴史をを振り返ると、自然と日本の歴史が分かります。

すべてのひとが印鑑をもつ権利を与えられた「印章の日」
本人である証明を手にした喜びは、きっと計り知れないものでしょう。
印鑑はなにかと不便に感じることもありますが、本人証明のあかし。
署名に加えて印鑑が必要というのは、どれだけ日本が厳重な国であるかがわかります。
事実、印鑑登録制度が今も続いているのは日本だけです。

今では機械でつくられた三文判が普及していますが、はんこであることは変わりません。
「はんこは押せればどんなものでもいい」と思う方も多いでしょう。
ですが、日本人ならはんこを大切に扱う気持ちをもつのも大切です。「使う機会がないから」と、実印を持ってない人も多いことでしょう。

印鑑社会はおそらくまだ続きます。これから先いつ必要になるかわからないので、前もって準備をしておくのもいいでしょう。

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