「押印」と「捺印」の意味は?
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「押印(おういん)」と「捺印(なついん)」。
押と捺はどちらも「おす」ですから、どちらも「はんこをおす」という同じ意味となります。
しかし、漢字が違うということは微妙に意味が違うのが、日本語というものです。
では、どのように違っているのでしょうか。
■「押印」はどんな意味?
「押印」は、じつは「記名押印」の略です。
「記名押印」の「記名」は自筆による記名やサイン以外により書かれた名前のこと。ですから、ゴム印やパソコンでの氏名を入力したり、他人が代理で氏名を記する場合などを意味します。
ということは、自分でなくて、他の人ですから、たとえ自分の名前がその紙に書かれてあったとしても、自分が書いたという証明にはなりません。
■「捺印」はどんな意味?
「捺印」は、「署名捺印」の略です。
「署名」は、自署のこと。本人が自分で名前を書くことですから、「捺印」は自署に印鑑を押すことを意味します。
何らかのトラブルがあったとき、筆跡鑑定を行うことで署名した本人が契約した証拠として、証拠能力が高くなります。
人は文字を書くとクセが現れ、どんなに真似をしても他人とはまったく同じ文字を書くことができません。このことから、本人である証拠として用いられるのです。
「押印」と「捺印」が持つ効力の違い
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「押印」は「記名押印」、「捺印」は「署名捺印」ですから、法的効力は「署名捺印」、いわゆる「捺印(なついん)」のほうが上となります。
欧米なら署名、いわゆる手書きのサインが絶対的な効力を持ちますが、ここ日本ではサインだけでは効力が落ちます。そこに印鑑が加われば信頼性が増してがぜん強い効力を持つようになります。
では、効力の強いものをランキングで見ていきましょう。
1位 「署名捺印」…署名+印鑑 契約は有効
2位 「署名」のみ…契約は有効
3位 「記名押印」…記名+印鑑 契約は有効
4位 「記名」のみ…正式な効力としては認められない
このような順位となります。ではどのように使い分けをすれば効果的に使えるのでしょうか。
まず、重要度の高い書類には「署名捺印」です。これで何かあったとしても確実な証拠として残すことができるようになります。
簡易的な契約書類は「記名押印」で対処します。
ただし、「記名のみ」では証拠不十分とされることもあるため、印鑑がなくても成立する見積書などでは記名のみの場合ということもあります。ただし、見積書でも信用度を上げるためには、「記名押印」で対処するようにしましょう。
上司に印鑑をもらうときはどう言えばいい?
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では、上司に印鑑をもらいたいときはどう言えばいいのでしょうか。
「はんこ、お願いします」
「印鑑、お願いします」
と言いたいときは、どう言っているでしょうか。
もちろん、そのままでも通じます。しかし、これはビジネスマナー上、きちんと区別をつけて言えるようにしておきたいものです。
ここで「押印」と「捺印」の違いがわかったのですから、
「こちらの書類に記名押印をお願いします」
「署名捺印をお願いします」
という言い方に変えることができます。
今後は印鑑が欲しいときはしっかりと言い方を変えるようにしてみましょう。上司も言い方に気がつき、『できるようになったな』と認めてくれるきっかけとなるかもしれません。
取引相手のときはどう言えばいいのでしょうか。
「押印」や「捺印」のまえに「ご」をつけることでより丁寧になります。より丁寧にするなら「お願いします」を「お願い申し上げます」に変えるといいでしょう。
「こちらの書類にご署名、ご捺印をお願いします」
「ご住所とお名前を記入し、ご押印の上、返信くださいますようお願いします」
「押印」と「捺印」を使い分けするためにも「押印」は「記名押印」、「捺印」は「署名捺印」と覚えておきましょう。
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