「名字」と「苗字」って何が違うの?
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名前は生まれたときにつきますが、改めて「名字」って何なの? と聞かれると、はて?と考えてしまいます。
なぜなら、小さな頃から使っていて当たり前のものだったから。自分を特定できる唯一のものですし、なくてはならないものです。
しかし、ある書類には「名字」、違う書類には「苗字」と書かれてあることがあります。
「名字」と「苗字」はどちらも「みょうじ」と読みますが、どう違うのでしょうか。また、なぜ、両方の漢字が使われているのでしょうか。
何気なく使っている漢字ですが、ご存じのように難しいものです。漢字をちょっと間違うと、意味が全く違ってしまうことがあるのでややこしいこともあります。
常用漢字はその名の通り、一般的に使われる漢字使用の目安を示すもので、2010年に内閣告示された常用漢字は2,136字となっています。小学校では1,006字、中学校では1,130字を学習することになっています。定期的に見直すことで時代に沿った漢字を使うように調整されているんですね。
最近ではあまり使わなくなった漢和辞書を見てみればわかりますが、普通のもので約1万字、分厚い辞典だと何と5万字も載っています。やはり漢字っていっぱいあるんだな~と改めて思ってしまいます。英語ってそれに比べると少なくてうらやましい限りです。
話は戻りますが、そのほとんどが「名字」で「苗字」が使われているのを見るのは少ないようです。しかし、「名字」も「苗字」も同じ意味です。
また、「名字」は常用漢字ですが、漢字が違うということはもともとは違っていたということが推測できます。では、どのように違っていたのでしょうか。
名字の由来とは?
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「名字」と「苗字」を比べてみると、何となく「苗字」のほうが古そうですが、実は「名字」のほうがはるか昔から使われていたようです。
平安時代より前では氏姓制度がしかれていました。何となく歴史で習ったな…と思い出す人もいると思いますが、「氏(うじ)」と「姓(かばね)」は違ったものです。
氏といえば、歴史の教科書にも載っていてテストにも出た物部氏(もののべうじ)や大伴氏(おおともうじ)をイメージした人もいるでしょう。大和朝廷で軍事や刑罰を司ったことでも有名です。
このように氏は血縁集団の呼び名として使われていました。
一方、姓は大化の改新(646年)により、天皇から授かった称号のことで元々は位の高い人だけが持つものだったのです。
名字のようなものは平安時代の終わりごろに人を区別する必要性が生まれ、自然発生することになったのです。
理由は、藤原の氏族が増えすぎたため、どこの藤原の人であるかがわからなったため。そこで地名から区別されるようになり、通称がいつの間にか定着し、その呼び名を名乗るようになったのです。
それが徐々に拡がり、平安時代の終わりには通称が「家名」として定着していったのです。
一方、武士も公家と同じく姓を同じくするものが多く、こちらもどこのものだか区別がつきません。そこで、武士たちは自分たちの領地・名田(みょうでん)を守るため、自分の支配する土地の地名を名字として名乗り始めたのです。
公家の家名と武士の名字は、統合され、室町時代になると農民にまで広がるようになりました。
やがて、明治維新となりました。政府が進める近代化政策の中で全国民の把握をする必要性があり、全ての国民が公的に名字を持つことになり、太政官布告(法令)が出されることになったのです。
苗字の由来とは?
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さて、「苗字」はどう生まれたのでしょうか。
苗字は江戸時代に生まれた言葉で、遠い子孫、末孫を示しています。簡単に言うと「家の名」という意味の言葉。
明治5年、「複名禁止令」が出されました。今までは適当に「どこそこの○さん」と愛称や通称で呼ばれていましたが、これによりどちらか一方を名とすべきと布告が出されました。
苗字の登録が一向に進まないので、そこで政府は明治8年「苗字必称義務令」を出したのです。これにより苗字をつけて名乗るようになったのです。
「苗字」は、古くはよく使われていましたが、ほとんど現在では使われていません
何気なく使っている名字ですが、歴史を知ることで違った目で見ることができるようになります。自分のルーツを探すというテレビの番組がありますが、自分の名前に興味を持つことで歴史を知ることができるようになりますね。
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