目立つ色だから朱色なの?
出典元:https://www.shutterstock.com
普段、何となく使っている印鑑はたいてい朱色ですが、どうして朱色なのでしょうか。
確かに朱色は目立ちます。ただ目立つからという理由なのでしょうか。
もちろん、朱肉というくらいですから朱色と決まっているのでしょうが、よく考えると朱肉にはスポンジタイプと練りタイプのものがあります。
スポンジタイプのものは艶やかな朱色のものがほとんどですが、練りタイプのものは落ち着いた黒っぽい朱色のものもあります。実際、黒っぽい色のものは印鑑を捺してみてもパッとした朱色ではなく少し黒っぽい色です。
なぜ、色の違いがあるかというと原料や製造法によって色の違いが出てくるということ。
また、練りタイプの朱肉の色を調べてみると朱色だけでなく、赤や紅、はたまた黄色に近い色もあるようです。
朱色に宿るのは神の力?
出典元:https://www.shutterstock.com
そもそも印鑑の元となる「印」が使われ出したのは、紀元前5000年頃のメソポタミアといわれています。この頃はスタンプ式で布や粘土に捺されていて、所有物を表していました。
印を捺す理由は、印には聖なる力が宿ると考えられていたため、その神聖な力によって所有物を守ってもらうためでした。
封印という言葉が示すように、印を捺して封をしておけば守られます。開ければすぐにわかってしまいますから。
また、朱色は神である太陽や炎をイメージさせ、神聖な色とされてきたため、印と結びついたのかもしれません。
では朱肉の材料とはどんなものなのでしょうか。
朱肉の原材料は顔料+油+繊維質
出典元:https://www.shutterstock.com
朱肉には水銀朱が使われてきました。猛毒なため現在は使われていませんが、水銀朱は縄文以来、朱色の顔料として永年使われてきたものです。
水銀朱は正式名を赤色硫化第二水銀といい、独特の赤色が好まれて使われてきました。「辰砂(しんしゃ)」とも呼ばれています。中国の辰州で多く産出されたため、辰砂という名がつきました。
朱色を出すために、水銀朱以外にも弁柄(べんがら)とも呼ばれる酸化鉄赤、鉛などほかの金属系のものも使われましたが、水銀朱の朱色は色が上品で美しく、さらに長い間色もあせないということでたいへん貴重なものとされてきました。
朱色は神社やお寺でもよく見られます。また、東大の赤門など「朱塗り」といわれているものがその名残りです。
また、水銀朱は不老不死にも効くとされ、秦の始皇帝は生への執着からこれを飲んで中毒死したと史書に記されています。
中毒死を起こしてしまうほどの猛毒の水銀は今では使われていませんが、同じような色の人工物が代わりに使われるようになりました。
さて、朱肉はおおまかに顔料となるものに油と線維質のものを練り合わせたもの。ヒマシ油や松脂、白蝋、もぐさ、パンヤ、和紙といったものを練り合わせれば手作りでも作れます。
朱肉を見たら、そんな歴史をふと思い起こしてみるのもいいかもしれません。
- 知識
- VIEW:4,872