はんことは?印鑑とはんこの違いを徹底解説!

はんことは?印鑑とはんこの違いを徹底解説!

印鑑とはんこは本来言葉の持つ意味が異なります。ここでは、その違いと2つの言葉がうまれた理由を歴史を振り返りながらくわしく説明します。 2018年05月25日作成

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印鑑とはんこは本来言葉の持つ意味が異なります。ここでは、その違いと2つの言葉がうまれた理由を歴史を振り返りながらくわしく説明します。 2018年05月25日作成

みなさんが普段何気なく使っているはんこ。はんこは印鑑とも言われますよね。
「印鑑は立派なもの」「はんこは簡素なもの」
そういったイメージをもっている方も多いと思います。

ですが、はんこと印鑑は本来違う言葉であり、意味も違うのです。
では一体どう違うのでしょうか。
ここでは、はんこの言葉の語源や歴史を振り返りながら、日本で印鑑制度がはじまった理由までをくわしく解説していきます。


はんこと印鑑は違う?

出典:https://www.shutterstock.com

現在では、同じ意味で使われているはんこと印鑑ですが、以下が本来の意味です。

はんことは、「個人や組織が当事者であることを証明するしるし・道具」のこと。
印鑑とは、「押した時に紙にうつる文字」のこと。

つまり、はんこは「押すの道具」で、印鑑は「押した文字」ということになります。

漢字にはそれぞれ「印=しるし」「鑑=かがみ」という意味があります。
そこから、「しるしがうつったもの」つまり、今でいう印影(いんえい)または印形(いんぎょう)と同じ意味になります。
そして、道具のことは本来「印章(いんしょう)」というのですが、この言葉を使う人はほぼいません。もしかしたら、はんこ屋さんや寺社で印章という言葉をみたことがある人もいるかもしれませんね。

ではどうして「印鑑」「はんこ」2つの言葉がうまれたのでしょうか。
ここからはんこの語源、印鑑の歴史をそれぞれみていきましょう。

はんこの語源

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語源は、版行(はんこう)が転じて「はんこ」と呼ばれるようになったと言われています。

版行とは、江戸時代に流行った色付きの木版画、浮世絵の技法のこと。
浮世絵では葛飾北斎の富士山の絵が有名ですが、実はあれは木版で描かれているのです。

彫刻刀で木を掘り、インクをつけて紙に転写する、この一連の流れが「版行」です。
浮世絵は同じ絵を何枚も転写できるので歌舞伎のチラシに使われていました。

そして浮世絵は分業で行われていたので版元(今でいう出版社)でつくられていたのです。
もともとは浮世絵をつくること自体をを版行と呼んでいましたが、やがて絵を掘った木そのものを「はんこ」と呼ぶようになりました。

また、当時は権力をもった武将などの私印ブームでもありました。私印は今でいうサインのような、独自のマークが入った華やかなはんこです。

そういった浮世絵と私印の2つのブームによって、やがて絵や文字をほった木全般を「はんこ」と呼ぶようになりました。

印鑑の歴史

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印鑑の起源は古代メソポタミアにさかのぼります。

当時印鑑は、富や権力をもつ人がその地位を明らかにするために作っていました。
今でも当時の印鑑は美術価値がとても高いものです。
最初に日本に伝わったものは「漢倭奴国王印(かんのわのなのこくおういん)」。
日本がまだ「倭(わ)」という名前の国だった頃です。
中国ではすでに使われていた印鑑ですが、日本では使用することはありませんでした。

実際に印鑑が使われるようになったのが奈良時代。
中国の官印制度を日本で取り入れるようになりました。
といっても当時は、個人が印鑑を持つことは禁じられていたため、最初は当時の一番の権力者天皇がもっていました。のちに役所、寺社、などが少しずつ持つようになりました。

やがて戦国時代には、権力を持ち出した武士達も印鑑を使うようになります。
ではその頃、庶民はどうしてたのでしょう。
年貢を納めるときなどには、親指に朱肉をつけて押す爪印(つめいん)・拇印(ぼいん)を印鑑の代わりに使っていたのです。今でも拇印は聞くことはありますが、使う場面はほどんどありませんよね。

そして庶民の人も印鑑をもつことができるようになります。
1873年(明治6年)印鑑制度が始まったのです。
すべての人は重要書類に署名と印鑑を押さなければいけない決まりが出来ました。

当時欧米のサイン文化も支持されていましたが、結果的にサインより印鑑が重視されるようになりました。印鑑は役所で登録する必要があり、やがて「実印・銀行印・認印」さまざまな種類が生まれたのです。

現在でも、印鑑制度設立日の10月1日は「印章の日」といわれています。
それにちなんで、印章の日は、毎年全国各地で使わなくなった印鑑を供養する催しが開かれています。
ここから日本の印鑑制度がはじまったのです。

印鑑の歴史をふりかえって

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技術の発達した現代では、偽造される可能性のある、印鑑そのものが危険だと指摘されています。事実、印鑑制度が続いているのは日本と台湾のみです。
それにともない指紋認証や、タッチパネルサインなどに切り替える機関も増えてるのが現状。
「どうして印鑑制度なんてあるんだろう」と思う人も少なくありません。

ですが、印鑑の歴史はとても長く、それほどまでに日本にとっては大切なものです。
権力をもたない一般市民が初めて「自分の証明」を手に入れた時、さぞ嬉しかったことでしょう。印鑑を手にもつとシャキッとした気持ちになるのはそのためです。

こうして印鑑文化が日本でいまだに続いているのは、日本が「セキュリティに厳しい安全な国」である、からかも知れません。

こうした歴史を振り返って、改めてはんこを持つことは、日本人にとっては大切だと言えるでしょう。これを機にふだんのはんこの扱い方を見直してみてはいかがでしょうか。

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